【文系大学生】技術系企業への就活

文系の大学生が理系就職できる業界は?《鍵はプログラミング》

はじめに

 私はキャリアコンサルタント、バイオ関連製造業の研究開発者、通販実務の管理責任者としての経験から、基本的に文系の大学生には技術系企業に就職することを強くオススメしています。なぜなら、”革新技術を駆使した商品やサービスが問題解決手段の主軸になる時代”が到来するからです🐙。これからのDX社会では、「最新技術やそれを駆使したプロダクトがビジネスの初期段階の根幹となり、それを基盤とするサービス展開によって利益を得るというビジネスモデル」が台頭してくるからです。

 コロナ禍で急成長したズーム社はその典型例でしょう。ズーム社はまず最初にスピード優先でウェブ会議ソフト(このプロダクトの品質の良し悪しが鍵)の利用を無料で消費者に普及させ、それに満足したリード(見込み顧客)に追加サービスを有料のサブスクリプション(月額課金:ここが収益の源泉)で提供するビジネスモデルで成功しました。
 このようなSaaS(Software as a Service)モデルは、Product-Led Growth (商品の良さが連鎖的に事業の拡大発展を誘発するビジネス)と呼ばれていますが、このパターンが日本でもこれからのDX関連ビジネスの主流になると思います🐙。

 繰り返しになりますが、世の中のDX志向を追い風としてキャリアアップのチャンスに変えるためには、まずは文系学生は技術志向の企業に就職する必要があります。その上で、できればそのようなデジタル革新技術に触れることができる役職(例:商品企画設計マーケティングカスタマーサポート)に配属できることを目指す必要があります。

 一般的には文系学生がいきなり理系職種で就職ことは非常に難しいのですが(工学系やバイオ系などの技術分野ではほぼ不可能)、理系学生と十分に対抗できる職種が1つだけあります。それは、ずばり申しますと「ウェブ系エンジニア」です。なぜなら、ウェブ系エンジニアの技能の根幹であるプログラミングは、文系学生でもパソコン1つあれば書籍やオンライン学習で独学できるからです。

 そこで、本ブログでは文系学生がウェブ系エンジニアとしてIT企業に就職するための道筋を提案いたします。

ウェブ系エンジニアを目指して就活するために必要な準備とは?

 文系学生がIT業界のウェブ系エンジニアを目指す場合、学生のうちにプログラミング(例:サイト・アプリ・ゲームソフトなどソフトウェア制作)やIOTに関するリテラシー(例:オリジナル仕様のパソコン組み立て・スペック仕様の特注、多種多様なデジタル機器の操作方法の習得)の能力を高めつつ、何らかの有形実績(趣味やアルバイトでも良いのでプログラミングのポートフォリオやデジタル創作物)を作ることが必要です。

 なぜなら、大手のIT企業(特に自社開発企業)の場合は主要なエンジニア職は概ね有名大学の理系大学院(修士)の学生で埋まってしまうからです。そもそも枠は少ないのです。
 それゆえ、文系学生がウェブ系エンジニア職を新卒採用で目指すとすれば、中小企業のフロントエンドのエンジニアに的を絞った方がよいかもしれません。

 実際、ウェブ系エンジニアを目指す過程では1年以上の時間を費やしてでも(ただし、本業の文系専攻の勉強とうまく両立することが大事)、理系技能を磨くなどの努力は必要です。例えば、アルバイトとしてアプリ開発企業の検品や入力業務を経験することも役立ちます(ただし、同類の単純作業であれば長期間やるべきではない)。
 あるいは、アプリ制作などのサークルに入ってオリジナルアプリを作成したり、ランサーズやクラウドワークスなどでウェブ系の仕事を受注したりすることも実績になります。

ウェブ系エンジニアとして文系出身の強みを活かすには?

 実際にエンジニアとして新卒採用された文系学生の方は就職後1ー2年では、理系出身の方と比べて技術専門性で劣りますが、コツコツと勉強しながらOJT(社員研修がしっかりしている企業ならベター)でしっかり学んでいけば十分に追いつきます。
 それどころか、文系の強みであるコミュニケーション力や企画力を掛け合わせることで理系出身のエンジニアでは容易にできない市場価値のあるンサルティングやソリューション提案ができるような人材に成長することも不可能ではありません。
 私の経験では、社内の情報共有グループウェアや通販顧客管理のシステム設計の外注先のIT企業(SIer)のプロジェクトリーダーは文系出身の若手エンジニアであることも珍しくありません🐙。

 実際、理系出身者とのバランスからしても、文系出身のエンジニアの人口比率は20%以上(もちろん、仕事内容や規模により異なる)になるのではないかと思います(個人的経験🐙)。次のとおり、大卒採用時にはプログラミング未経験であった文系学生をシステムエンジニアとして新卒採用した事例を3つご紹介します。

 神戸大学経営学部を卒業してプログラミング未経験のまま入社されたやまもとさんがシステムエンジニアを目指した理由は、「同期や先輩の文系出身の方々がコミュニケーション能力にとても優れていましたので、彼らと差別化できる付加価値(コミュニケーションが苦手な自分にとっての差別化ポイントとして)としてプログラミングがよいのではないかと感じたことです」とコメントされています。
 実際、大手SIerに入社して半年間のプログラミング研修を受けた結果、プログラミングは割と簡単で、資格試験勉強と比べると非常にコスパがよいと感じたそうです。さらに、「プログラミング習得は自分でビジネスを創り出せる技術が身につく」というメリットも強調されています。実際、彼は3年間のサラリーマン経験の後に、フリーランスのエンジニアとして独立されています。

引用元:文系出身なのにプログラマーを目指した理由 やまもとりゅうけん 作 2018年12月26日 Youtube配信

 システム開発企業の株式会社ワークアプリケーションズ(株)に新卒入社した文系出身のエンジニアの小川さん(現在は(株)ミナカラ CTO取締役)の研修時の体験告白が YouTube 配信されています。
 「入社時点は全くのプログラミング未経験でしたら研修は本当に辛いものでしたが、この経験で自力でアプリケーション開発など問題解決する力が養われました」とコメントされています。

引用元:【毎日泣いていた】文系・プログラミング未経験からどうやってプログラマーになったのか全てお話しします。 エンジニアチャンネル 作 2020年5月4日 Youtube配信

 IBMに新卒入社した文系出身の若手社員2名へのインタビューの YouTube 配信です。古野さんは金融系コンサルタントとして、中条さんはAI・IOT関連のソリューション事業部のシステムエンジニアとして活躍されています。両名ともウェブ系エンジニアとは言えませんが、プログラミングやIT技術を基礎とする職種としてご紹介します。
 古野さんは入社時点ではプログラム未経験でしたので研修を通じて一定レベルのプログラミングを学びつつも、システムエンジニアになるのではなく、社内のエンジニアの協力を結集して自らのアイデアを実現したいと考えて、コンサルタントを目指したとのことです。
 一方、中城さんも入社時点ではプログラム未経験でしたが、「学生時代に学んだ複数の外国語の共通体系がプログラミング言語と親和性があったので、あまり苦なくエンジニアに馴染めました」とコメントされています。

引用元:IBM 文系社員 座談会 IBM Japan Channel 作 2021年4月27日 Youtube配信

 それでは文系学生がシステムエンジニアを目指して就活する場合、どのIT分野が適正かということについて、私からのアドバイスは次のとおりです。
 「文系学生はフロントエンドのウェブ系エンジニアまたはウェブ系マーケター販促企画広告または顧客分析)またはカスタマーサクセス(ソリューション事業のコンサルタント・広告運用代行・顧客サポート)を目指しなさい」というものです。

 一見、技術の専門性を有する理系出身の学生よりも不利に感じるかもしれませんが、スタートは少し苦労するものの2−3年くらいの期間で見るとむしろ文系の方に勝算があります。
 文系の優位点であるコミュニケーション能力企画提案力を掛け合わせることにより相乗効果を発揮しやすい職種として、バックエンド(サーバーサイド)よりも顧客との接点の多いフロントエンド(クライアントサイド)のウェブ系エンジニアをオススメします(ただし、フロントとバックの両面のウェブエンジニアリングの総合的な知識は必要)。

 この職種で経験を積めば、カスタマーサクセス(米国で最もクールなIT職種)への道筋が見えてきますよ。実際、私はこのような文系出身の有能なウェブ系エンジニア(例:提案営業や顧客サポートもできるカスタマーサクセス)をたくさん見てきました🐙。具体的には次のとおりです。

ウェブ系エンジニア(プログラマーを含む) 
 実際、文系学生がシステムエンジニア(SE)として採用される場合も比較的多い職種です。企業によってはSE職として意図的に文系学生を増やしている事例もあります。全くプログラミングの知識や経験がない時は、いきなりエンジニアを目指すのではなく、まずはフロントエンド(クライアントサイド)の顧客サポートの仕事から始めるという方法もあります。
 私の通販企業での経験では、文系の新卒や高卒で採用された社員がオンラインの顧客サポートから泥臭く初めて頭角を現すことができれば(デジタルデバイスの操作やプログラミングはOJTと自己啓発で勉強)、表舞台の新規営業や広告管理などのウェブ系エンジニアに抜擢されることもよくありました🐙。

 
《”文系人材に対するプログラミング習得の適性” に関する個人的見立て(経験則)》
 国語や外国語が得意な文系学生(特に英語やドイツ語の文法はロジックが厳格なのでコンピュータ言語の文法と類似するから)または高校時代に数学Ⅰをそれなりに勉強していた文系学生(例えば受験で数学が必須の大学出身者)は、就職後にゼロからプログラミングを勉強したとしても、習得が非常に早いです🐙。特に、後者の場合、理系出身のプログラマーに見劣りしないレベルで十分にやっていけます。

 ちなみに、プログラミングの習得において、求めるレベルにもよりますが、ウェブ系のエンジニアになる上で数Ⅰや数Ⅱの知識はぶっちゃけほとんど必要ありません(論理的思考力は必要)🐙。
 データ分析、シミュレーション(機械学習)、ゲーム制作に関するプログラミングでは、それぞれ統計学・確率論、微分・積分、三角関数などの数学がちょっと必要になることがあります(数学が苦手でも慣れればできますが、やや理系が有利かも🐙)。


 IT業界において、ゲームやアプリなどのソフトウェア開発のSEまたはプログラマーとして採用された場合あるいは通販企業のSEとして採用された場合、BtoC(ビジネスツーコンシューマー:いわゆる消費者向け販売)が主流になります。
 一方、ソリューション事業(クライアント企業の事業効率化・透明化などシステム構築を提供支援)あるいは上述のソフトウェア開発の製造受託の場合あるいは通販企業の広告運用サポートのSEとして採用された場合、の仕事の性質はBtoB(ビジネスツービジネス:いわゆる法人取引)になります。これらは仕事内容としてはプログラミングを含め顧客サポートおよびその仕組み構築の仕事ですから、BtoCのSEの仕事とは質的にかなり異なります。

 文系学生が技術系企業に就職しますと、職種に限らずいろいろな場面でチーム内のパートナー(上司・部下・同僚)として理系人材と協力しながら仕事をすることになります。一方で、文系学生が営業職エンジニア職として採用された場合、理系学生と比較されて評価されることもあるでしょう。状況によっては社内競争することもあるかもしれません。

ウェブ系マーケティング → カスタマーサクセス
 IT業で人事経理の職種を希望される場合は、上述の製造業の事例と同じような性質の仕事になるだろうと思います。でも、IT業に就職するのなら、やはり最前線で活躍ができるシステムエンジニアコンサルタント営業職またはウェブ広告営業が圧倒的にダイナミックで刺激的です。
 最近では、BtoBの顧客フォロー専属のウェブ系マーケターあるいはウェブ系エンジニアとしてカスタマーサクセスという職種も登場しています。この職種は単なるウェブ広告運用代行や従来型のカスタマーサービスに留まらず、クライアントのビジネスを拡大発展させるためのあらゆるサポートを包括してます。ちなみに、BtoCのカスタマーサクセスの場合は、消費者満足度の最大化が目標となります。

 このようなウェブ系マーケティング職(カスタマーサクセスを含む)の場合、文系出身のエンジニア採用も少なくありませんが、ウェブ広告運用などのフロントエンドだけでなく顧客データ分析も含めると少なくとも入社後は一定レベルの数学思考が求められます。
 ですから、大学受験のときに数学が必須科目であった文系学生の方(国公立大学および一部の私立)がそうでない学生よりも就活で有利になる可能性がこれからますます高くなっていきます。よって、共通テスト(旧センター試験)や2次試験で数学を必須科目にしていない私立大学の文系学生は、在学中に理数系の勉強(例:プログラミングなどの情報系資格を取得する)をすることをおすすめします🐙。

 文系出身のウェブ系マーケティング職(カスタマーサクセスを含む)の場合、理系出身のバックエンド(主にサーバーサイドや通信デバイスとの連携)のSEとも協同してチームとして仕事をすることになりますので、エンジニアやプログラマーなど技術職から信頼される一定レベル以上ので技術リテラシーを有していることが不可欠です。サービスや商品の特性として技術志向が強いため、入社後に次のような3つの能力が求められます。

・サービスや商品の基礎となる技術を理解したうえで、わかりやすく説明する能力(社外とのコミュニケーション能力)
・IT業界のエンジニアとして採用される場合、一定レベルの数学思考または語学レベル(中堅または大企業の場合、入社後の研修等で習得する機会が与えられますが、小企業やベンチャー企業では自力で頑張るしかないですね🐙)
・パーソナリティが文系人材とは質的に異なる理系人材との社内コミュニケーション能力およびリーダーシップ(これはめちゃくちゃ重要です🐙)

以上