本章の「文系社会人」とは、主にサービス業に従事する事務職(総務、経理、労務・人事、法務)や営業職(営業、マーケティング、販売員など接客業)として働く文系出身(大学文系学部、高校普通科の文系、商業高校などを含む)の会社員(いわゆるサラリーマン)を想定しています。
近年、革新的な科学技術(AI、5G、IOT、ブロックチェーン、仮想通貨、AR・VR、ウェッブサービス、量子コンピューター、データサイエンス、3Dプリント、ロボット、自動運転、SDGs、代替エネルギー、遺伝子診断・治療、食品トレーサビリティ、ヘルスケアなど)を駆使した商品やサービスが私たちの生活の中にどんどん普及しています。
そんなDX時代(デジタルトランスフォーメーション)の中で、文系社会人が生き残れるキャリアを培うためには数学思考(論理的考察力)が不可欠なのです。文系と言えども、少なくとも一定レベルのデジタルリテラシーと時代を担う革新技術の概念理解が必要です。
逆に言えば、最新技術の教養を有した文系社会人にとってはDX時代の特需に絡んで有利なキャリアを構築できる千載一遇のチャンスでもあるのです。
本章では、文系社会人の理系シフトとは次の3つのパターンを意味しています。
① 一つ目は、文系職種から理系職種への転職(職種変更)です。ただし、一般的にこれが有効に機能する事例としては、主に「フロントエンド側(顧客のパソコンやスマートフォンのウェブやブラウザ上で動くプログラミング)のシステムエンジニアなどIT系」などの職種領域が狙い目(文系人材がサーバーとソフトの連携をコントロールするバックエンドのSEになる例も時々あります)です。
この場合、文系職として働きながら、一定レベルの技術教養を自己啓発によって身につける必要があります。例えば、文系職からシステムエンジニアやプログラマーに転職する場合、コンピューター言語、プログラミング、通信技術などに関する資格を取得したり、新たにIT専門学校や教育サービスを利用して技術を習得するケースが増えています。また、個人的な趣味を通じてIT技術を独学した文系出身システムエンジニアも増えています。
ただし、実際の転職となると、ソフトウェアやアプリを製作した実績がポートフォリオとして履歴に記載可能なレベルに到達できればベターです。
② 2つ目としては、上述①の延長線上にあるウェブ系マーケティングに注力するキャリア戦略です。基本的にプラットフォーム(例:検索サービス、シームレスマップ、SNS、コンテンツ配信サービスなど)はGAFAなど海外企業に占有されてしまっており、日本人の文系社会人がこの分野に参入しても勝ち目はありません。
それでは、どうするか? アプリ(ノンコーディング操作、CMS、OS)やその周辺デジタルツール(アプリ、端末機器)を自由自在に使いこなす力と既存のデジタル技術を新分野&新サービスに応用展開する力(これは理系よりも文系的な素養が重要)を養うことです。さらには、既存のプラットフォームで動くアプリや関連デバイスの企画設計(一定レベルのプログラミング知識は必須)ができればベターでしょう。
個人的な意見ですが、日本市場に鍵って言えば、この職種領域は「品質にこだわる理系出身プログラマーよりも営業センス(顧客志向)に優れた文系出身プログラマーの方が向いているのではないか」と考えています。このタイプの成功者の事例としてはアップル創業者のスティーブ・ジョブズやセールスフォース創業者のマーク・ベニオフが挙げられます。
③ 3つ目は、文系職種はそのまま変わらずに、サービス業から製造業の企業に転職するケースです。この場、「取り扱う商品やサービスが技術志向であること」と「社員の多くが理系出身の技術者である」という点が大きく異なります。その結果、職種は同じでも、仕事の性質や要求される能力の質が変わってくるのです。
この場合においても上述の①②と同様に、文系職として働きながら一定レベルの技術教養を自己啓発によって身につける必要があります。さらに、文系社会人とは異質なパーソナリティの理系社会人とのコミュニケーションスキルを身につけることは不可欠です。
そこで、本章では、実際に役立つ文系社会人にとっての時代にマッチした ”文理融合キャリア構築法” の具体的手順を、次のとおり提案します。
【文系から理系へのシフトの事例】
●サービス業の文系職が業種シフトを目指すべき技術系企業:
・製造業
・IT
・通販
・マスコミ(科学ジャーナリスト)
●文系職から転職可能な理系職種とは?:
・ 文系職 → IT&通販のフロントエンドのエンジニア(SE、プログラマー)
・ 文系職 → 通販のデジタルマーケティング(商品企画or販促企画or広告)
・ 文系職 → IT&製造業の商品企画開発(技術開発ではない)
・ 文系職 → IT&製造業の技術営業(技術志向の強い既成品の営業:例として精密機械)
・ 文系職 → IT&製造業の会計(技術資産の価値評価と資本政策)
・ 文系職 → 科学ジャーナリスト(企業倫理と社会問題の解決)
●文系職が技術系事業で創業するとき:
・IT系フリーランス
・技術系企業の経営者
●技術系企業における文系職の社内昇進:
・人事部門のプレーヤー → 人事部門のマネージャー
・文系部門のマネージャー → 経営者(COO、 CEO)
【文系から理系へのシフトの質的変化とは?】
・仕事の対象: 人 → 中庸(人と物への注力バランスを調整)
・心のエメルギーの向き: 外向 → 中庸(外向と内向のバランス調整)
・動機: 感情(非論理的)→ 中庸(感情と論理的思考のバランス調整)
・表現法: 言語(定性的) → 中庸(定量的数値を根拠とした言語表現)
【文系社会人の技術系職場への適性とは?】
・自己分析とは?
・他人評価分析とは?
・どんなキャリア専門家から支援を受けるとよいか?
以上