技術系企業への就職を目指す文系大学生の条件とは?

 大学生および大学院生の就職先の業界はサービス業と製造業に分かれますが、文系学生の場合は相対的にはサービス業へ就職される方が多いのではないでしょうか。
 そんな中で、あえて製造業(ハードウェアの開発製造)またはIT業(ゲーム・アプリ・プラットフォームなどのソフトウェア開発・ソリューション事業・ウェブ広告運用代行)などの技術色の強い企業に就職を希望される文系学生の方は、その理由を明確に説明できますか? 

 私の個人的意見ですが、文系学生は技術系企業に就職することを強くオススメします。なぜなら、”革新技術を駆使した商品やサービスが問題解決手段の主軸になる時代”が到来するからです🐙。要するに、ビジネス成功の鍵として、宣伝広告力やマーケティング力も重要なのですが、それ以上にビジネス成功の鍵として”技術”のウエイトが高くなるということです。

 今後10年で安定的な技術革新が期待でき、且つ文系学生が技術職として理系就職が可能な業界は、ずばり「ITとヘルスケア」の2つくらいです。それぞれ具体的な職種としては下記のとおりです。

理IT業界: 
・ウェブ系エンジニア(システム、アプリ、管理ソフトなどのプログラミング制作)
・ウェブ系マーケター(広告や顧客管理にともなうエンジニアリングまたはカスタマーサクセス)

ヘルスケア業界: 
・加工食品・菓子の商品企画開発職、
・農産物・水産物の生産および品質管理職
・化粧品の商品企画開発職
・健康ツールの商品設計開発職(自転車、シューズ、寝具、スポーツウェアなどローテク商品)
・健康管理デバイスまたはアプリケーションの開発職

 前者のIT業界ではウェブ系エンジニアであれば文系で新卒採用時から勉強を始めても理系出身の社員に追いつき追い越すことが十分可能です。
 一方、後者のヘルスケア業界であれば、文系大学生にとって食品業界の商品企画開発職が採用ハードルが比較的低いのではないかと思います。
 なぜなら、これらの業界の技術職は数学的素養の必要性が比較的少ないことが挙げられます。また、これらの業界では、提供する商品やサービスの機能性だけでなく、人間の五感や感情(心地よさ)に訴えるプロダクトの開発力を要求されるからです。

【製造業界への就職を目指す場合(理系就職にこだわらない)】
 一口に製造業と言っても、どんな業界および職種を希望するかによっても企業選定の動機はいろいろでしょう。職種としては大きく分けて営業職と事務職(人事・労務管理、経理、総務)がありますが、サービス業とは仕事の性質や条件(立場や環境)がかなり異なります。それぞれ個別に説明しますね。

営業職: 
 製造業と一口に言っても取扱商品の範囲は広いのですが、その中でも技術志向性が強い商品を扱うメーカーが狙い目です。例えば、医薬品、化粧品、機能性食品、化成品、精密機械、産業用装置、分析機器、ハイテクデジタル機器などが挙げられます。これらの商品の機能性や技術特性を理解して顧客に説明することは理系の方がやはり有利です。ですから、当然のことながら、文系出身の営業マンは苦手な技術分野の勉強も人一倍努力する必要があります。

 ところが、優れた文系出身の営業マンはちょっと発想が違います。彼らは社内の理系社員(技術者)と人間関係の構築がうまく、困ったときに彼らに協力を仰ぎながらうまく受注してしまうのです。この理系社員を巻き込む力は文系営業マンにとってめちゃくちゃ重要です🐙。この能力を鍛えることに注力すれば、やがて経営者や独立の道筋も見えてきます。
 個人的な経験則ですが、異分野の人材をうまく巻き込みながら味方にする能力は理系よりも文系人材の方が秀でていることが多いと感じています🐙。

 一方、説明のわかりやすさや顧客の心情やニーズを汲み取る力は文系の方が卓越していることも少なくありませんので、その強みを活かすことができればベターです。特に、BtoBのビジネスモデルの場合、取引先との人間関係の構築力は文系の真骨頂です。この能力も上述の巻き込み力と繋がりますよね。

 ところで、近年は販売手法も大きく変化してきました。いわゆるクライアントと面会して商談するようなオフライン営業スタイルだけでなく、ウェブ広告を利用した通販(BtoC)やインバウンド(BtoB)などのオンライン営業スタイルが台頭しています。BtoCの事例としてはアップル社やテスラ社、BtoBの事例としてはマイクロソフト社やデル社が有名です。
 後述するIT業界や通販のウェブマーケターやカスタマーサクセスという職種を製造業の営業マンとして目指すことは将来的に極めて有望です🐙。

 そもそも、営業職は「クライアント(カスタマー)の心をいかに動かすか、いかに満足していただけるか」という人間相手の感情労働であるが故に、相対的にAIに代替されにくいのです。

人事および労務管理: 
 理系出身の社員は文系出身の社員とパーソナリティ・仕事観・ライフスタイルに大きな違いがあります。文系学生はこの点をほとんど理解できていないことが多いと思いますし、就職してからもなかなか理解できません(この違いの重要性にも気付付くことはすごく大事です🐙)。

 特に、中小企業やベンチャー企業に就職した場合はクセの強い理系社員の労務管理や人事評価をしなければなりません(これは大企業と大きく異なる点の一つです)。これは仕事として非常におもしろい側面でもありますが、ストレスもかなり溜まります。

 人事・労務としてのキャリアとしても理系人材をマネイジメントした経験は企業経営(経営幹部社員、フリーランス、起業)にも多いに役立ちます。実際、技術系企業の経営の根幹は理系人材のマネイジメント(確保及び適材適所の登用・モーティベーション維持・精神的安定のサポート)ですから、培った人事キャリアは理系人材の小規模のチームづくりから組織運営の全てにおいて活かすことができます。

経理: 
 文系学生がサービス業ではなく製造業の経理マンを目指す最大の理由は、工業簿記の実務能力の習得です。すでに日商簿記2級以上の資格を有していても実務はかなり質的な違いがあります。それも製品特性や製造工程の個別要因に伴う管理の違いのみならず、事業規模、資金繰り状況、事業の区分、社長の考え方、市場の変化のスピードなどにも影響されます。
 また、実務は製造業の場合、設備投資と仕入の予算やコスト管理において、製造部門とタフな折衝になることも少なくありません。

 一方、新規事業参入やベンチャー企業の場合、資金調達に始まって初期投資から利益(損益分岐点)を得るまでの資本政策(キャッシュフロー管理も含む)がサービス業とは全く違うのです。でも、この点がファイナンス担当としてめちゃくちゃおもしろい点なんですけどね🐙。

 ただし、注意すべき点は、経理やファイナンスのルーティンワークはAIと親和性が高いため、将来的に実務のかなりの部分はAIに代替されてしまう可能性があります。この点を十分に考慮して人にしかできない部分の見極めとその技能をいかにして磨くかという課題を常に意識しなければなりませんよ🐙。

総務: 
 製造業とサービス業との決定的な違いは、製造業では一連の製造過程において物の付加価値と付随情報(作業員の管理を含む)が複雑かつ多段階に変化していくことです。つまり、原料仕入れ→加工・製造→製品販売において無数の仕入原料・中間品(仕掛品)・半製品・完成品・アフターフォロー関連品のそれぞれシステマティックに情報管理できている中小企業は非常に少ないです。その部分を担える人材を目指すことは有望だと思います。

 昨今はDX社会の到来という時代の流れで、各社はデジタル管理ツールやグループウェアの導入を進めて物・人・情報を一元管理しようという試みが始まっています。これは単なる効率化や見える化(情報の透明化)ではなく、情報の管理手法や社員の働き方までを変革するものです。

 この領域を構築・管理する仕事は会社の仕組み自体を変革するという点でものすごく魅力的だと思います。ただし、将来的にはこの部分もAIによってある程度は代替されてしまう可能性が高いです。

【 IT業界への就職を目指す場合(できれば理系就職を目指す)】
 文系学生がIT業界で理系就職を目指す場合は、「ウェブ系エンジニアまたはウェブ系マーケターフロントエンドの管理サポートが最も実現可能性が高いです。

 もちろん、入社後1年間は、技術の専門性を有する理系出身の学生よりはエンジニアとしての技能は劣りますが、努力次第で十分に太刀打ちできます。
 そして、プログラミングや現場実務が一定レベルに到達する頃には、文系の優位点であるコミュニケーション能力をエンジニアとしての技能と掛け合わせることにより理系出身のエンジニアよりも優位に立てる可能性を大いに含んでいます。

【 ヘルスケア業界への就職を目指す場合(できれば理系就職を目指す)】
 文系大学生が理系就職を目指せるチャンスがあるヘルスケア業界について、細分化すると多種多様な業種および職種に分かれます。
 そんな中でも、食品業界の商品企画開発職に対する文系採用ハードルは比較的低いのではないかと思います。一般に食品の商品開発は花形職種なので理系の学生でも競争倍率は高いですが、文系出身者の枠が設定されていることも珍しくありません。
 また、中小企業の場合は出身学部について文理にあまりこだわらないで教養レベル(大学時代の勉学やボランティアの実績)や意欲を評価して採用する会社も少なくありません🐙。それゆえ、文系学生が理系就職を目指すことができる職種の一つが食品の商品企画開発職というわけです。
 ただし、この職種は非常に人気が高いので(特に女性の方に配属希望者が多い)、大手食品メーカーの場合は配属の競争倍率は高いです。それゆえ、中小の食品メーカーが狙い目です。

 通常、食品加工製造技術はこの10年間で著しく進歩しています。ですから、大手食品メーカーでは基礎研究職や技術開発職は概ね有名大学の理系学生および大学院生(生物系または化学系の学部出身者)を採用することが多いと思います。
 しかしながら、最終的な完成品としての商品企画設計では一定数の文系出身の社員が抜擢されることが多いです。その理由は、求められる商品価値が単なる栄養機能だけでなく、色、味、香り、触感など論理的な思考だけでは解決できない課題があるからです。

 実際、中堅クラスの会社であれば、文系学生でも商品企画や製品開発に登用される事例はたくさんありますよ🐙。特に、女学生は有利です。

【技術系企業への就活をする文系学生へ】
 技術系企業への就職や起業を検討している文系学生が就活前に認識しておくべき重要事項(クリックでリンク先に遷移)を次の区分でまとめました。

 興味のある項目はリンク(青字でアンダーライン)をクリックしてください。

●技術系企業に就職できる文系学生の条件とは?
《製造業への就職を目指す文系学生へ》
営業カスタマーサクセスを目指す。
人事および労務管理
経理
総務

《IT業界への就職を目指す文系学生へ
ウェブ系エンジニアリング(プログラミングを含む)
ウェブ系マーケティング(プログラミングを含む)→ カスタマーサクセス(ウェブ広告運用および従来型カスタマーサポートを含む)

《ヘルスケア業界への就職を目指す文系学生へ
・食品の商品企画開発(形状デザインを含む)
・化粧品の商品企画開発(形状デザインを含む)

採用企業側の評価基準は?
・専門性(強み)は何か?
・理系ポートフォリオ(技術実績)はあるか?
・文系ポートフォリオ(学外活動)はあるか?
・理系学生との差を意識しているか?

文系学生技術系ビジネス起業のスタイルとは?
・フリーランス
・ベンチャー創業
・新卒1−3年企業で働きながら副業で稼ぐ!

【文系学生の技術系職場への適性評価法とは?
・自己分析とは?
・他人評価分析とは?
・キャリア分析の専門家によるコンサルティングとは?

以上