はじめに
大学進学を志す高校3年生が大学と学部を選択する指標は、①自分が好きなこと、②なりたい職業、③習得したい専門性、④自分の強み(得意科目)の4つですが、「これから迎えるDX(デジタルトランスフォーメーション)社会」と「科学技術の進歩スピードが著しく速い社会」と「働き方のスタイルの変化」いう3点への対策を前提条件に自己分析しなければなりません。この点(時代の流れを読む)が旧来の考え方と大きく異なる点です。
本投稿では、文系と理系それぞれの大学受験の事例を紹介しながら、「国公立vs私立』や「受験科目としての数学と国語」などを切り口にして、具体的な受験大学および学部の選定方法を解説します。
受験科目が自分の得意科目に合致しているという理由で大学や学部を選んでいませんか?
大学進学を志す場合、高校3年生になりますと、いよいよ受験する学部および大学を具体的に絞り込んでいかなければなりません。その選定基準は、高校1年生のときの文理選択の基準と同じく、①自分が好きなこと、②なりたい職業、③習得したい専門性、④自分の強み(得意科目)の4つのポイントです。
しなしながらが、高校3年生の1学期の段階では、①自分が好きなことを基礎とすることは当然としても、特に②と④について深掘りしていく必要があります。その際に、「これから大きく変化する社会環境 ”DX(デジタルトランスフォーメーション)社会到来” にいかに順応するか」あるいは「いかにしてDXの波に乗るか」を意識する必要があります。平たく言いますと、あなたの人生がDX社会で成功するためには、「数学(論理的思考)が必要な場面が往々にして出てくる可能性が高い」という意味なのです。
さらには、コロナ禍を契機に普及したテレワークやジョブ型雇用など「働き方のスタイルの変化」も考慮して将来の仕事観を養う必要があります。
この時期に、なりたい職業や将来のビジョンがある程度明確になっていればベストです。なぜなら、目標に向かって必要な専門性習得のロードマップを描きやすいからです。ところが、受験戦略を考えたときに、「希望する大学のレベルおよび学部が設定している受験科目」と「自分の得意科目(成績)」が合致しているかどうか、という現実が立ちはだかります。
①自分が好きなこと、②なりたい職業、③習得したい専門性、④自分の強みの4つの分野が総じてうまく一致している場合は進路を決めやすいのですが、一致していない場合の進路選択は非常に難しいです。この問題を解決する方法として、他者評価を交えた自己分析が挙げられます。それらの知見も含めて総合的に検討することが大切です。
大学で学びたいことや将来の職業が明確になっていない学生さんも多いでしょう。とりあえず、大学に入って興味がある学問の学びを試しつつ、将来像をじっくり考えるというスタイルもありですよ。
その場合は、なんとなく興味がありそうな分野(学部)を選ぶということでもOKですが、できるだけ将来の選択の幅が広くなるような道を選ぶことが重要です。例えば、文系学部と理系学部のいずれかで迷っているのなら、理系を選んだ方が得策です(文転はしやすいが、理転は非常に難しいため)。
さて、ここから具体的な受験科目選定と大学・学部の選定方法について文系と理系に分けて解説します。
文系の高校3年生にとって受験大学・学部の選択のコツは?
自分の強み・弱みの分析をするうえで、重要な指標が数学です。なぜなら、文系理系にかかわらずこれから5年10年先のDX社会(デジラルトランスフォーメーション)を生き残っていく上で数学(論理的思考)が不可欠だからです。厳しい言い方かもしれませんが、皆さんが就職活動をするであろう4年後には、数学ができない文系大学生の就職先はどうしても限定された業界・職種になっていくからです。
実際、早稲田大学・政治経済学部の入学試験において、2021年から数学が必須科目となりました。実は、産業界としても数学ができる大卒文系人材へのニーズがすでに高まっているのです
数学者の千葉逸人(東北大学・材料科学研究所・教授)さんと論破王と呼ばれる西村ひろゆきさんが、「人生に数学は必要?」というテーマで議論した番組がYOUTUBE(#アベブラ)で視聴できます。お二人とも、少なくとも政治経済の分野では数学は必須との意見で一致しています。この動画はめちゃくちゃおもしろいので、よかったら見てください。
引用元: 【天才数学者】人生に必要?算数で十分?文系でもマスト?「理論的に考える癖をつけるため」天才数学者×ひろゆきが議論!【メトロノーム】|#アベプラ《アベマで放送中》 – YouTube
繰り返しになりますが、好きなこと・興味がある分野を念頭に学部を選択することは当然のこととして、「将来の職業人としての付加価値を高めるという観点」と「職業選択の幅を広げるという観点」から数学の得意不得意を基準に大学と学部を選定することは意外にも現実的なのです。要点としては「数学✖️文系専門性の掛け算」なのですが、次のとおり具体的な実践項目に分類しました。
・ 数学Ⅰは多少苦手でもある程度は勉強してください。特に、IT関連や製造業に興味がある方は、数学Ⅰをしっかり勉強することを強くおすすめします。
・ 共通テスト(数学と理科2科目が必須)が必須である国公立大学を優先的に受験することをおすすめします(学費が安いことも重要)。その理由は、理数系の基礎学力があるという前提で教育カリキュラムが組まれているため、自ずと授業の質が高くなるからです(特に経済学部)。
・ 私立大学を志望する場合、数学Ⅰが受験必須科目になっている学部を選ぶことをおすすめします。
・ 学部の選択は、「なりたい職種に関連する分野」よりも「好きなこと・興味がある分野」を優先させた方が良いです。
ちなみに、なりたい職業が進学したい学部と一致しないときは(例:家業の税理士を継ぐ予定だが、大学では好きな法学を学びたい)、専門学校(例:税理士、会計士、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、国家公務員)を利用してダブルスクール体制で勉強することをおすすめします。
そこまでの経済的に余裕がないときは、とりあえず「なりたい職種に関連する分野」の学部に進学し、「好きなこと・興味がある分野」は大学内の設備や資料を利用しながら独学(サークルもあります)という選択もありです。
・ 海外でグローバルな仕事をしたいという希望があるのなら、倫理社会(特に宗教と実存思想)を選択して勉強することをおすすめします。外国人をパートナーに仕事をする場合、キリスト教やイスラム教など一神教(日本の仏教は神という設定はなく神道は多神教)の理解が不可欠です。
数学が苦手あるいはどうしても数学が好きになれない文系高校生の方は、がっかりしないでください。コンピューターやデジタルツールと全く関わりなくできる仕事というのはほぼありませんが、数学思考をそれほど要求されない職業もたくさんあります。
具体的には、教師、保育士、介護士、弁護士、ペットケア、店員、ホテルマン、美容師・理容師、エステティシャン、職人、料理人、ジャーナリスト、作家、芸術家(画家、音楽家)、農業・漁業など「人の心に寄り添う仕事や接客業」あるいは「人ではなく物が対象となる手仕事やアナログ仕事などの職人」も十分に魅力的で社会的意義の高い職種です。
理系の高校3年生にとって受験大学・学部の選択のコツは?
理系の高校3年生の皆さんは数理科目が得意でしょうから、上述のDX社会が求める職業人の卵という点では有望です。ただし、特定の数理分野だけが突出しただけの人材では、「将来の職業人としての付加価値を高めるという観点」と「職業選択の幅を広げるという観点」からすると不十分なのです。また、特定の分野だけの知識に偏重した勉強の仕方をしてしまうと、その分野が技術革新によって一気に飲み込まれてしまった時に再起することが非常に難しいのです。
数理科目を得意とする理系にとって、非論理的な側面(人間の感性や感情)を有する学問(国語、倫理社会、歴史、美術・音楽)を同時に学ぶことが重要なのです。
特に、小説を読むこと、哲学・宗教、進化論・政治経済史などはその典型例です。理系学部を志望する理系の高校3年生にとって、要点としては「文系知✖️理系専門性の掛け算」なのですが、次のとおり具体的な実践項目に分類しました。
・ 数学が得意であることは当然として、理科(化学・物理・生物・地学)については好きな科目ではなく得意な科目(1つでよい)を2次試験用科目と割り切って集中的に勉強してください。
要するに、進学したい学部の分野と得意科目が異なる場合(例:理学部生物学科志望であるが、得意科目は物理)、得意科目で受験することをおすすめします。
・英語(理系学部の二次試験で必須)をしっかり勉強してください。なぜなら、英語はコンピューター言語としても広く使用されているからです。将来、留学やグローバルな活躍を目指すのなら英語の習得は不可欠です。
・ 学部の選択について、「得意な分野」と「好きなこと・興味がある分野」が異なるとき、「好きなこと・興味がある分野」を優先させた方がよい結果に結びつきやすいと思います(私信)。少なくとも、その方が努力の継続性が高いです。
例えば、「純文学が大好きで国語の成績は学年でトップで作家になりたいという夢があるが、一方でコンピューターサイエンスに興味があり大学では情報科学系の学部に進学したい」という場合は、非常に判断が難しいです。本人の嗜好と実用的な側面(職種の将来性)も考慮して判断する必要があります。このようなときは、ご両親や担任の先生あるいはキャリア専門家に相談することをおすすめします。
・ 学部の選択について、「なりたい職種」と「好きなこと・興味がある分野」が異なるとき、なかなか判断が難しいです。この場合は、専門家にお願いして自己分析をすることをおすすめします。ちなみに、なりたい職業が進学したい学部と一致しないときは、はまだまだ人生経験に乏しい高校生にとって非常に悩ましいことですが、2つの選択の接点を探すという試みは有効です。
例えば、職業としては医師になりたいが、好きな物理学を大学でもっと深く学びたいという欲求が強いとき、とりあえず学部としては医学部に進学して(その間は教養科目として物理をとるなどして物理学科の教授と仲良くなる)、医師免許を取得してから大学院の物理学研究科に進学して、「医療機器の研究開発を目指す」という道であれば、医学と物理学を掛け合わせた「希少価値の高い専門性」を培える可能性があります。
・ 海外でグローバルな仕事をしたいという希望があるのなら(例:グーグルやネットフリックスで働きたい)、倫理社会(特に宗教と実存思想)を選択してしっかり勉強することをおすすめします。
外国人をパートナーに仕事をする場合、キリスト教やイスラム教など一神教(日本の仏教は神という設定はなく神道は多神教)の理解が不可欠です。私以外でこのようなコメントをする人はほとんどいませんが、宗教や民族に関する知識がないと外国人パートナーとうまく付き合っていくことは難しくなります。
・大卒後に技術職を希望しているなら、その対局となる非論理的な側面のある学問(国語・哲学・倫理・宗教・歴史)を高校時代にしっかり学ぶことをおすすめします。この学びを受験に活かせしたいのであれば、共通テスト(国語と社会2科目が必須)がある国公立大学を受験することをおすすめします。
以上