【高校1年生】文理選択

【高校1年生へ】DX社会で生き残るための文理選択の基準とは?

はじめに

 高校1年生にとって文理選択は人生の重大な岐路です。これまでは単純に理数科目が得意かどうかで決めていたという学生が多数いましたが、これから迎えるDX時代にはその考え方は全く通用しません。
 本投稿では、① 好きなこと、② なりたい職業 、③習得したい専門性、④ 自分の強み(他人と比較してより少ない努力で事を成し遂げられる能力)を指標に、文系理系の選択事例を紹介しながら、文理選択のプロセスと考え方を解説します。
 最後に、文理選択で迷ったときの対処法として、自己分析のコツについても言及します。

理数科目が得意か否かだけで文理選択を判断していませんか?

 高校1年生の年末くらいには2年時での文系理系の選択をしなければなりませんよね。あなたはどんなふうにして理文選択を決めますか?

 「理系科目(特に数学)が得意であるか、否か」という学業成績が大きな決定要因になっていませんか? このパターンは非常に多いのが現状です。

 でも、こんな理由で文理選択を決めちゃっていいですか? 一度しかない人生の岐路と言っても過言ではないくらい大事なことですよ。

 高校1年生の段階では、自分がどんな分野に向いているのか、将来になりたい職業は何か、将来にどんな人材になりたいか、などが明確になっていない学生も多々いらっしゃることでしょう。近年、このような学生は増える傾向にあります。
 もし、あなたがそうであれば、高校1年生というまだまだ若い人生の段階であっても、可能な限り自己と向き合い真剣に自分の将来を考えてみる必要があると思いませんか? しかも、「これから迎えるDX(デジタルトランスフォーメーション)社会という巨大な環境変化にいかに順応するか」ことを前提条件として、あなたの将来を考えることが不可欠なのです。

文理選択の参考指標とは?

 そんな学生さんのために、文理選択する上で参考となる指標を提案します。整理すると、下記の通り6つの切り口があります。
① 好きなこと(興味がある分野)
② 習得したい専門性(実務または学問として身に付けたい技能や知識)
③ なりたい職業(将来の自分の職業人生)
④ 自分の強み(他人と比較してより少ない努力で事を成し遂げられる能力)
数学のレベル(論理的思考)
語学のレベル(傾聴力&読解力&表現力) 

 必ずしも番号通りの優先順位でなくてもよいですが、①番の「好きなこと・興味があること」は特に重要です。なぜなら、そもそも好きな分野でなければ、勉強なんて長続きしないからです。

文理選択の事例1「ソーシャルゲームが大好き!」

 例えば、「ソーシャルゲームが大好きで自分でもゲームアプリを作ってみたい」という夢があるとしましょう。この場合、②番の習得したい専門性は「プログラミング」、③番のなりたい職業は「ゲームクリエーター」となります。このとき、④番の強みとして「一つのことにのめり込む性格」で、⑤番の数学レベルが比較的高く(数学の偏差値が60)、⑥の国語力は平均レベルよりも少し低い(偏差値が40)となれば、迷うことなく理系を選択するのがよいでしょう。

 一方、この場面で①②③④⑥は上記と同じであっても、⑤の数学レベルが平均よりもかなり下であった場合(数学の偏差値が40以下)、文理選択の判断は難しくなります。なぜなら、②のプログラミングを習得する上で、数学は極めて重要な基礎学力となるからです(プログラマーの中でもデジタル映像クリエーターの場合、必要とされる数学レベルはより高くなります)。
 プログラマーへの道を諦めたくないのなら、理系に進んで数学の成績をなんとかしてアップできるように頑張った方が有利でしょう。でも、自己分析の結果、「プログラマーへ執着心がそれほど強くない」あるいは「どうしても数学が好きになれない」という認識が得られれば、文系選択をして文系職を模索することも選択の一つになります。

 それでも、あえてプログラマーになる可能性を残しておきたいのなら、文系を選択しつつ数学Ⅰをしっかりと勉強して、一般消費者との接点が多いフロントエンド(高度な数理技能は比較的要求されない分野)のプログラマーになるという道もあります。この分野では、文系が得意とする「顧客志向の営業センス」を活かしたアプリ制作やデジタルマーケティングへの応用展開が可能です。

《脚注》
1: フロントエンドとは?  
 文系理系にかかわらず、しっかり勉強すればプログラミングは誰でもできるようになります(私信)。フロントエンド(クライアントサイドとも呼ばれ主にブラウザ側で動くアプリのプログラミング)のプログラミングであれば数学Ⅰのレベルで概ね対応できます。ただし、ゲームソフトやゲーム端末の開発ができる技術者を目指すのであれば、ある程度は統計・確率・行列・微分積分の理解があった方が有利ですので、できれば数Ⅲまでしっかりと学習することが望ましいです。
 ただし、今後はコーディングもますます簡素化されたり、より便利なデジタル操作ツールやプログラミング言語が開発されると思われますので、フロントエンドに求められる数学レベルはもう少し下がっているかもしれません。

文理選択の事例2「音楽家になりたい!」

 上述(ゲームクリエーターを目指す場合)の①の「ソーシャルゲームが大好き」、②の「プログラミング」、④の「一つのことにのめり込む性格」⑤の数学が得意、⑥の国語力も平均以上の条件は同じだとして、③番のなりたい職業が「ゲームクリエーター」ではなく、音楽家(少なくとも音楽に携わる仕事)であったとしましょう。この場合のブレイクスルーとして、「ゲーム音楽の作曲家」という職業を検討してみることも可能です。

 ちなみに、私の知人(米国人)によると「米国ではゲームのビジュアルクリエーターとミュージッククリエーターの2つの職種が独立しており、チーム内で分業体制になっている」とのことです。この事例では、高校2年生になっても数ⅡBの勉強を続けながら、文系を選択して芸術系の大学進学(数学が受験科目に含まれていればベター)を目指すという選択もできます。

 あるいは、理系を選択した後に、情報系の学部に大学進学してプログラミングを習得しつつ、音楽の勉強は特定の音楽教師に付いて習い事として習熟を目指すというキャリアも可能です。

文理選択の事例3「弁護士になりたい!」

 別の事例を紹介します。例えば、③番のなりたい職業が「弁護士」だとしましょう。この時、①番の好きなことは「ITDXに関心が深い」、②番の習得したい専門性は「法学(弁護士資格の取得)」、④番の強みとして「弁論部に所属しており話をすることが上手である」、⑤番の数学レベルが非常に高く(数学と物理学の偏差値が70)、⑥の国語力も平均レベル以上(偏差値60)であったとすれば、王道としては文系を選択し、法学部に大学進学することです。

 しかし、この事例の場合、注目すべき点は①の「ITやDXに関心が深い」および ⑤の「数学と物理学の偏差値が70」という特性です。これらを長所として活かすのであれば、あえて理系を選択し、工学部へ大学進学して、ダブルスクールで弁護士養成専門学校に通って大学院からは法科修士に進学して弁護士資格を取得するという選択もあります。
 これが実現すれば、工学の専門性を有する法律家となりますから、例えばIT企業の特許侵害訴訟専門の弁護士として希少な市場価値を生み出すことができるのです。このパターンは、「理系文系の専門性(工学✖️法学)を掛け合わせた文理融合キャリア」の成功事例の一つです。ちなみに、昨今は競争も激しく、弁護士資格を取っただけで食えるほど安泰ではありません。

 仮に、「ダブルスクールが負担になるのではないか」と考えれば、高校3年生で文転して文系受験することも可能です。「迷った時や複数の進路の可能性がある時はとりあえず理系を選択する」という決断も非常に有効です。なぜなら、理系から文転はできますが、文系からの理転は極めて難しいからです。

文理選択の事例4「家業を継ぐ!」

 一方、稀に実家が病院・薬局であるとか、弁護士であるとか、税理士であるとか、会社経営者(事業主)であるというような家庭環境で育って家業を継がなければならないという事情でそれぞれ医学部・薬学部法学部商学部経営学部への大学進学を前提に理文選択をせざるを得ない学生もいます。このパターンは、①番の好きなことと③番のなりたい職業が異なる典型的な事例です。

 この場合、本人が本当に人生をかけてやりたいことがあるのなら、そう簡単に受け入れることはできないでしょう。仮にそうではなかったとしても、本人の将来について家族とも話し合いつつ、じっくりと考える機会が必要ではないでしょうか?

自己評価による自己分析がダメな理由とは?

 多くの学生にとって自力で自己分析して具体的な勉学プロセスを計画することは非常に難しいのです。なぜなら、自分自身の潜在的な意識まで深掘りして、本当の自分を見つけ出す必要があるからです。
 また、大学のカリキュラム、大学院、専門学校の情報収集も必要です。さらに、自己評価だけでは、偏見・思い込み・願望の要素が少なからず含まれており、必ずしも正しい自己分析にならないからです。

 こんなとき、よろしければ、私どものキャリア支援サービスをご利用ください。私どもでは他人評価と客観的評価をあなたにフィードバックしながら、あなたの自己評価を補足してより完成度の高い自己分析を支援します。
 「あなた自身がなんとなく感じていた文理選択の方向性」と「客観的評価に基づく適性」との違いに気付いていただければ幸いです。

以上